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統計学的事実の「盲点」

昨日は、現時点で「代替補完療法」を既存の科学的な手法で、その効果を「評価する」こと
は困難があるという話を書きました。どうして、評価することが困難なのかについてはもっと
詳しく書きたいのですが、その前に西洋医学で重要な意味を持つ「エビデンス」ということの
意味を考えてみたいと思います。

「エビデンス」とは証拠・根拠と言う意味で、私たち医者は、あらゆる治療行為はエビデンスに
基づいて
行われなければいけないというふうに教育を受けてきました。
つまり、「たぶんこうだろう」とか「こんな感じ?」という主観的なあいまいな理由で治療行為を
行うことに対する戒めなのです。
それは治療を受ける側の人の安全を確保すると言う意味で、いまも重要な意味を持つことには
変わりがありません。しかし、あまりにも「エビデンス」偏重主義であるため見失われた物が
あるのではないかということが最近言われてきています。
そういうことについて、これから数日間をかけて書いていきます。
そして、病気の持つ意味について考えたうえで、「代替補完療法」がどういう役割を果たしうる
のかについて考察したいと思います。



現在、私は「訪問診療」専門のクリニックで働いています。おもに老人ホームなどの施設を
中心に往診でまわっています。施設では80歳以上の方が大半を占めます。

老人ホームには、もちろんいろいろな疾患を持ってたくさんのお薬を飲んでおられる方
(いわゆる「患者さん」)もおられるのですが、ほとんど今まで病院には罹ったことがない
という方(いわゆる「健常者」)もたくさんおられるのです。
今まで病院に勤務していた時には「患者さん」としか接する機会がなかったのですが、
「健常者」のかたと接するようになってひとつのことに気づきました。


「健常者」の方でも、施設に入所されるときには希望があれば、採血検査をしたり定期的な
診察を行うのですが、それらの方の中にはLDLコレステロール(「悪玉コレステロール」と
言われているもの)が200近かったり(正常は140以下)、血圧が200近かったり
する方もおられるのです。時には驚くほどコントロール状態の悪い糖尿病が見つかることも
あります。
よく知られているように、悪玉コレステロールや血圧が高いとか糖尿病は「動脈硬化」の
リスクファクターであり、そういう状態を長い間放置していると、心筋梗塞や脳梗塞などの
病気を発症する危険性が高いとされています。
そして、私たち医者もそういう方が病院に来られたらためらうことなく、薬物投与で治療を
開始します。
これらのリスク・ファクターというのは「二重盲検比較試験」で科学的に証明されているものです。

そして、私たち医療者はこの「エビデンスに基づいて治療(EBM)」を行います。
それは医者として正しい判断なのですが、そういう今まで何の疑問も抱いて来なかった「判断」を
超えたところで、これらの「健常者」の方たちはお元気に生活されていると言う事実には
少なからぬ衝撃を受けました。

二重盲検比較試験には思わぬ「盲点」があるのではないか、というのはそういうことです。
数字的に何%と示されると、私たちはそれが「絶対的な揺るがしがたい事実である」かのように
錯覚してしまいますが、個別に眼を向けると決してそうとは限らないということが
わかります。


「リスク」というのは、全体のパーセントで評価された「統計学的な事実」です。つまり、
二重盲検比較試験で、悪玉コレステロールが160以上の人と140以下の人の2つの
グループで、心筋梗塞を発症するパーセントを比較して統計学的に有意差があれば、
「悪玉コレステロールが高い人は心筋梗塞を発症するリスクが高い」という『事実』
になるわけです。その事実は決して間違ってはいませんし、決して侮ってはいけません。

しかし、個別で見ると悪玉コレステロールが200近くてもまったくぴんぴんとしている人も
いるし、逆にそういう動脈硬化のリスクファクターがひとつも見当たらないのに、発病される
方もいます。

集団としては決して間違っていない「事実」も、個別で見ると疑問を挟む余地が出てくる、
というかもっと深いところには「別の事実」が隠れている可能性がある、ということだと
思います。
それは、決して統計学的に示された「事実」を無視していいということではありません。
ただ、病気の発症を規定するのは私たちが考えるレベルの「リスク・ファクター」だけで
はないということが重要です。ひょっとしたら、もっと大きな「発病」を規定する要素が
ある可能性があるということです。



統計学として明らかにされた「事実」を決して軽んずると言うことではありませんが、そういう
統計的事実とは別に、個別的な事実と言う物があるということを私たちは忘れてはいけないのだ
と思います。そうしないと、この統計学的な事実の盲点(二重盲検比較試験の盲点)に引っか
かってしまう可能性があります。つまり、統計学的事実がすべてではないということです。



では、私たちが通常考える「リスクファクター」を上回る「要因」としてはどのようなものが
考えうるのでしょうか。次回はそのことについて少し考察してみたいと思います。




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プロフィール

小西 康弘

Author:小西 康弘
京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院などで内科全般を研修し、消化器内科を専門とする。内科専門医。

内科医として約20年病院勤務をしてきましたが、西洋医学の範疇だけでは、とても患者さんの肉体的問題に対して対応できないとその限界を痛感しています。
肉体的な問題の奥底には心理的、精神的な問題が隠れていることが少なくありません。表面に出てくる肉体的な問題は原因ではなく結果で在る事が多いのです。
トランスパーソナル心理学の各手法や、ヒーリング方を勉強中。
シーターヒーリング・プラクティショナー

このブログでは西洋医学だけでなく代替医療やその他の補完療法についての私の考え方や、いろいろな情報を書いていきたいと思います。


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